『広報戦略を活用して、ブランドを構築する方法』を配布中。無くなり次第終了しますので、お早めに!
書籍紹介
広報戦略TOP > 広報戦略の発想法 > 事例 患者さんの「ストーリー」を世の中へ

事例 患者さんの「ストーリー」を世の中へ
調査結果発表の場で、リウマチ患者の女性が語りました。「リウマチになって、今でも忘れられないことがあります。
娘が幼稚園のときのお遊戯会です。お母さん方も一緒に踊るんですが、
どうしても一斉にしゃがむところはヒザが痛くてできません。
『ママだけどうして一緒にやってくれないの?』と聞かれて、
なんと答えていいか分かりませんでした」。
調査を通じて紡ぎ出されたこれらのストーリーは、
想像される物語が具体的であればあるほど強い共感を生みます。
料理が作れなくなって家族の不信感が高まる様子を想像したり、
痛みを理解してくれない上司の理不尽なパワーハラスメントを
想像することによって、それまでまったく未知のものであった
「関節リウマチ」を既知の苦しみとして理解させるのに、
大いに効果を発揮するのです。
それだけではありません。今回の調査では、こんな結果も公表されました。
「病気のことを誤解された経験がある患者は7割以上にのぼる」
この結果は、健康な人々も、知らず知らずのうちにリウマチ患者が持つ
ストーリーの登場人物となっている可能性があることを示しています。
「若い人にかかるの?お年寄りの病気でしょう?」
「温泉やマッサージで治るんじゃないの」といった言葉は、
病気への理解が低ければ低いほど、誰もがうっかりと口にしてしまいそうなこと。
また「わがままだ」「怠けている」と非難されたことがある患者が約半数
いるという現実は、職場で体調を崩した人にイライラした経験を持つ者にとって、
「自分も無理解の環境を作り出す張本人ではないのか」という感覚を覚えさせます。
患者たちのアンケート回答による物語は、一般の人々を時には被害者、
時には加害者として巻き込み、その結果として社会全体のリウマチに対する
正しい理解を促していくのです。
この結果はメディアの共感も呼び、これらの調査結果とリウマチ患者の実態を
紹介する記事がその後数ヶ月に渡って日本中の新聞を飾りました。
また、この調査報告は学術的な研究としても非常に価値の高いものとなり、
研究論文として健康社会学やリウマチ治療分野の学会でも発表されることとなり
ました。
それぞれが今まで通りの生活を送る中には、なかなかコミュニケーションが
生まれることのないリウマチ患者と健康な人々。
このケースでは、リウマチ患者の心の内に眠っていた悩みや苦しみが、
物語化されることにより、世の中の理解や共感を生みだし、影響力を持つ
間接的なコミュニケーション、広報戦略を成立させました。
ただ漫然とリウマチの情報を流していたのでは、なかなかリウマチ患者と
社会の間の溝は埋まりません。そこに感情の入り込む余地を用意し、
日常生活の視点で共感を生む構図があったからこそ、多くのメディアに取り上げられ、
関節リウマチに対する世の中の理解をうながすことに成功したのです。




