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事例 「北京オリンピックの第三者の意見(2)」
PR会社ではまず人権問題について広報戦略の策を巡らせました。オリンピックは平和の祭典であり、人権問題を抱える国はイメージを損なうことが多いのです。
アパルトヘイト政策を布いていた頃の南アフリカ共和国が、オリンピックを
はじめとする多くのスポーツ競技大会に参加を許されていなかったことは
あまりにも有名です。
他にも1980年のモスクワ大会では、ソビエトのアフガニスタン侵攻に反対し
て、アメリカを始めとする西側諸国がボイコット。日本でも瀬古稔彦や山下
泰裕がオリンピック出場の機会を失っています。
長く続いてきた平和の祭典の裏側では、多くのアスリートが政治の犠牲とな
り、スポーツに専念することが阻害されてきたのです。そんな辛く悲しい歴
史を想起させ、時代の逆行を防がなければならないとIOC委員達の意識を植
えつけるため、PR会社はひたすらに、「人権問題は政治的問題であり、オリ
ンピックとは関係がない」という姿勢を貫き通しました。アスリートを二度
と政治の犠牲者としないためにも、政治とスポーツはあくまでも切り離すべ
きだと主張を重ねたのです。招致委員会の記者会見でも人権問題に関する記
述を削り、記者から質問が出ても「政治とスポーツは関係ない」で押し通し
続けました。
そんな招致委員会の姿勢を後押ししたのが、「第三者の意見」です。
しかも、オリンピック招致には大きな効果を発揮する、世界の一流アスリート
二人による発言である。中国が少数民族を迫害しているというイメージを吹き
飛ばすためには、少数民族出身者が北京オリンピックを支持していることを
アピールすれば効果は大きい。そこで白羽の矢が立てられたのは、一人は
キャシー・フリーマンであり、もう一人はマイケル・チャンです。
オーストラリアの先住民族アボリジニーの出身というマイノリティの代表で
あるキャシー・フリーマンは、開催国決定の前年に行われたシドニーオリン
ピックにおいて、金メダルを獲得した陸上選手です。
同大会の開会式では、聖火リレーの最終ランナーを務め、世界中の話題を
さらった人物でもあります。もう一人は、プロテニスプレーヤーのマイケル・
チャン。
中国系アメリカ人というマイノリティの彼が、北京オリンピックを支持するこ
とのインパクトは、中国を良く知る人物だけに非常に大きいことが予想され
ました。PR会社は、こうした綿密な人選と計画の下に「キャシー・フリーマ
ンとマイケル・チャンが北京オリンピックを支持した」と世界中にプレス
リリースを配信。多数のメディアに取り上げられました。
マイノリティの代表である二人が北京開催に共感していることを前面に打ち出
すことによって、同国内のマイノリティも開催を望んでいるかのような空気を
醸成することに成功。中国の人権問題を話題にしづらい空気を見事に作り出
したのです。




